ビジネスシーンにおいてストレスはつきもの。
とはいえ、その付き合い方やコントロールの仕方というのは難しいものです。
蓄積されれば確実に影響を与えるもので、いかに体が健康だとしても、心の健康が損なわれていては本来の力は出せません。
メンタルヘルスとは「心の健康」つまり前向きな気持ち、意欲的な姿勢で職場の環境に適応出来ているかを問うための言葉で、あなたの部下が心的原因により作業効率が落ちていれば、それは「メンタルヘルスに問題がある」ということになるでしょう。
心の健康度合いは実にやっかいで、見た目に分かりづらいのはもちろん、本人すらその度合いを把握できていないことが多いのです。
そのため、企業には、従業員のストレスが過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないよう配慮することが求められています。
ストレスが与える職場への影響
ストレスの受け皿は人によって大きさや形が異なります。
ストレスに耐えることができなくなればどのような影響が出るのでしょうか。
- 休職、退職による人材損失
- 不安や緊張による生産性の低下
- 人間関係の亀裂
- 人材損失や生産性の低下による従業員の負担増
- 負担増による過重労働
- 従業員のうつ病発症
- 訴訟等の問題発展
他にも影響は考えられますが、いずれも一つ発生すれば全体に影響を与える大きな問題へと発展してしまいます。
考えられるストレスの要因
長時間勤務
なかなか、この長時間勤務に関する問題は解消されません。ほとんど企業側の体制が問題と言えるでしょうが、根本的な解決は難しい場合がほとんどです。
厚生労働省があれこれ施策しても、中小企業の36協定がどこまで浸透しているのか、と。
会議やプレゼン一つとっても、毎回当たり前に「18時から」とか、そうなると会議終了から修正の打ち合わせ含めて余裕で21時を回ることもザラです。
「業務的な問題で・・・」「顧客次第の仕事だから・・・」「見通しがつきにくい仕事だから・・・」そんな話をよく聞きます。
心的負担が過重な勤務
長時間拘束もそうですが、息つく暇もない過密なスケジュール、急かされる仕事の中で繰り返される失敗、それに伴う叱責・・・そうした連鎖が精神的に追い詰められる原因になります。
「期待」といったものや、「平均的従業員の範囲」をその人に当てはめて考えるのは悪いことではありませんが、その人の「精神的脆弱性」を考える必要があります。
人間関係の悪化
これは職場に限らず、家族や恋人との関係も含まれます。
恋人や夫婦、親子のような関係では、率直に意見をぶつけすぎて互いに傷つけあうことがありますし、親子関係では本音が言えず、それがストレスになることもあるでしょう。
職場関係では、部下や同僚、上司と、たとえ気が合わなくとも毎日接しなければならない、顧客とは利害関係で結びつく為、トラブルを起こさないよう気を遣います。
昇進などによる責任
部下を持つということは自分以外にも守るべきものが出来るということです。
人によっては「やりがい」、人によっては「面倒」に感じるでしょう。
部下を持てば、自分の思い通りにいかないことが多いです。意図しない問題、部下と上司の板挟み、これらが様々なストレスを誘発します。
転勤、赴任等の環境変化
環境の変化はストレスを感じやすい要因です。
社内の異動というのは基本的に急に決まります。職種や人間関係が変わると、仕事がうまくいかなくなることは多い。
自分の意図しない異動に適応障害になる人は少なくありません。
部下の不健康サインを見逃すな
ストレスが溜まれば、人間はその負荷を軽減しようと様々な行動を起こします。
基本的には行動が重くなる、固くなる。
これらは本人の意図しないものであるが故に、職場では実に顕著に現れます。この不健康サインを見逃さずに上司がきちんと拾い上げることが出来れば、その先の問題に至る前に対処が可能な場合が多いです。
- 表情が暗くなる、元気がなくなる
- 遅刻、早退、欠勤が多くなる
- 能率の低下によるミスの増加
- 付き合いが悪くなる、積極性がなくなる
- 決断力の低下
- 人当たりが強くなる
- 腹痛、頭痛などの体調不良が多くなる
これらはストレスサインの典型です。
サインを見つけたら、出来る限りのサポートをすることです。
ストレスを和らげ、適応を促進する
社会的関係の中で蓄積されたストレスを緩和するには、社会的関係をもって対応するのが効果的です。つまり「周囲から支えられている」と認知させることが、その人をストレスの衝撃から和らげ、適応を促進することになるのです。
共感や愛情の提供
気にかけること、大切にすること。
例えば、元気がないと感じた部下に「どうかしたのか?なんでも話してみてくれ」と気にかけてあげる。それが例え気のせいであっても、「そう感じた」なら声を出す。これが部下にとっては「自分のことを気にかけてくれている」という安心感につながります。
サポート
例えば、重なる仕事で書類に埋もれて頭を抱える部下に対し、「仕事を分担するよ、みんなで協力して終わらせよう」とサポートしてあげる。
この時、きちんと部下に「ねぎらいの言葉」をかけつつ、現在抱える仕事内容を把握して適切な割り振りをしてあげることが重要です。これが抜けた状態で、ただ上記の言葉を言ってしまうと、「あぁ、自分がもたついてるから見かねて声をかけたのか」と勘違いされます。
自分が「実は辛かった」と弱音を吐ける状態を作り、その行為をきちんと「ねぎらう」ことでストレス軽減につながります。
評価する
これも「ねぎらう」ことになりますが、「君は本当に一生懸命取り組んでいるね」と肯定的な評価をしてあげる。
心のガソリン投入です。「上司はきちんと見てくれている」そう思ってもらえれば、部下の励みとなり、ストレスによる緊張をほぐすきっかけになるでしょう。
ただし、そうなると身体的不調に気をつけてあげる必要性が出てきますので、その点をしっかりフォローしてあげることです。
情報提供
人間関係などのストレスは、職場内で解決出来ないような問題を抱える場合も出てきます。
そうした時に、その問題解決に必要な情報の提供をしてあげる。
ネガティブ状態の人間は、自分の問題は自分の中だけで解決しなければいけないと思い込む傾向が強くなるので、他者からの進言を入れることで他の選択肢を選びやすくしてあげます。
ストレスとうまく付き合うために
ストレスチェック制度の導入や労働基準法の改正など、厚生労働省もあれこれやってはいますが、現場の環境変化は早く、より複雑化しています。
そうした中で、やはり現場第一線にいる管理職の重要性は高まっていると言えるでしょう。
とはいえ、結局は部下をきちんと気にかけているか?この一点だと私は考えています。
職責からくる権限を行使すれば、部下のネガティブをポジティブに変えることが可能です。
不健康サインを出す部下の話をしっかりと聞くこと、そして解決への道を一緒に模索してあげること。必要であれば上長と連携して専門医への早期受診を進めること。必要な場合は家族との連携も視野にいれること。
療養や休養が必要な場合は、できる限りのサポートをすること。
「あの人がいるから頑張れる」
職場にいるだけで、その人自身がストレスケアの一旦を担える存在になるのが理想ですね。