媚び続けない為にはどうするか
行動を引き起こす動機を見つける事。つまり、今行っている行為自体に意味があり、その行為をうまくやることに価値があるのだと信じること。
前回記事でモチベーション管理について触れましたが、媚びて自分を見失う人の大半は、媚びることに嫌気がさしている人だということを先に言っておきます。
他人から与えられるイメージが先行してしまい、本当の自分が分からなくなる、出せなくなる。その事に気付き始めてしまうと、何のために働くのか?という「うつ状態」に陥る危険性もあります。
人には自尊心というものがありますから、どこかで必ず葛藤するのです。
こうした時に自分を駆り立ててくれるのは、やりがいや好奇心、使命感や満足感といった内面的なもので、人から与えられる外的要因ではなく、内的要因による動機です。
つまり、流れに身を任せて働くのではなく、自分が行っている行為そのものをコントロール出来ているという自覚を持つことで、その行為自体に意義があるのだと信じる事。
「仕事を好きになれ」という理想主義的な意義で考える必要はありません。ただ、やることに意味があり、そして、それをうまくやることに価値があるのだと信じる事です。
働く上で目的や結果ばかりを見据えてしまうと、その日が来るまで常に我慢、自分を押し殺す建前の日々が続く事になる。このようなネガティブ状態では良い仕事は出来ないし、良い仕事が出来なければ評価も得られない。結果、自分や他人に対して失望の繰り返しになります。
働く上でポジティブな状態を作るには、結果よりも、今行っている行為そのものに動機を見出さなければいけません。そしてその行為に集中し、どんな行動を起こせばよいかを決定していくのです。そうすれば、一歩一歩確実に前に進んでいる実感が得られるでしょう。
上司を例に、付き合い方を改めて考えてみる
上司との付き合いで内的要因による動機を探す場合、前向きに、尚且つ自分がコントロールできるもっとも確実な方法は、”学ぶこと”である。
質の高い行動をするには、今自分が行っている行為が意義あるものだと信じる事。そうでなければ行為そのものに興味を持てないし、最善を尽くすこともできません。
言い方を変えれば、その行為に意義があるのだと思えるものでなければいけないという事。
「目的の為にはしかたない」「面倒だけど、しょうがない」などとネガティブに考えて接していては、その行為から動機を見出すことが難しくなります。
というのも、結局のところ、上司の評価を得ようとする場合、ある程度の取り入りが成功した時点で、そこから仮の信頼と評価を本来の信頼と評価に変えることが求められるのです。
なぜなら、始めはどうしても利害関係が必要になってくるから。
難しく考える必要はありません。媚びることで相手はあなたに関心を持ち、信頼と評価をする準備が出来ている。ならばあなたも相手を信頼する、評価するポイントを見極めることです。
例えば上司なら、上司が上司たるところ、長所の一つや二つはあります。
- 実は面倒見がいい
- 仕事が早い
- 企画力がある
- 発言力がある
- 場をまとめる力がある
- 分析力がある
- 愛社精神がある
- 営業力がある
- 知識があるなど・・・
自分にない尊敬出来るものは必ず持っています。
媚を売り、取り入ることによって、周りが気付いていない相手の一面が見えてきます。そうした部分を素直にリスペクトしましょう。
そして、その尊敬出来る部分を学ぶのです。
周りが何を言っていようと、自分は上司の一面を知っている。このことが、媚びているだけではない正当な理由として機能します。
自分が思ってもいない世辞や同調はストレスです。しかし自分が認めた上での世辞や同調なら素直な言葉ですから、違和感なく口に出すことが出来るでしょう。
自分を認めて頼ってくれる部下。上司として嬉しくないはずがありません。
媚を売ることで取り入りが成功している場合、上司はあなたを大切に育てようとしてくれますし、あなたがそれに応える事で、仕事の能力を高めながら同調する事ができます。
下心があり、その目的の為の取り入りとはいえ、良くしてもらおうという気持ちばかりが前面に出ては、上司の期待に応える事ができません。
期待を裏切れば不信感が生まれ、その不信感を払拭する為にまた媚びての繰り返しにならないようにしましょう。
向上心を隠す必要はない
変に裏表の顔を作るくらいなら、いっそオープンにする位のほうが周囲に受け入れられます。
出世したい、今より給料を多く貰いたい、上の地位にいって色んなことをやってみたい・・・そういった向上心は隠す必要はないでしょう。
ただし、周囲への配慮を欠く言動は気をつける必要があります。
「今の仕事はやりがいがないから、もっと上へ行って違う仕事がしたい」
「こんな給料じゃやってられない」
「俺が出世してこの部署を変えるんだ」
例えば上記のようなもの。隠す必要はないと言っても、現状同じような状況にいる人の仕事や体制を否定する発言は、周囲との摩擦を生みます。
また、誰しもが向上心をもっているわけではなく、今の状況、給料、待遇に満足している人もいますから、そうした人たちの仕事を脅かすような発言も注意が必要です。
「今よりもっと色々なことに挑戦してみたい」
「色々と手を出したいものがあるから給料を増やしたい」
「生活を安定させて家族(または田舎の両親)を安心させてやりたい」
このように、外的要因から出る欲求ではなく、内的要因からくる欲求だと言われると、周囲も反論できません。また、内的要因による動機を話す事は一種の自己開示になりますから、相手は「自分に本心を話してくれた」と感じ、その後は、むしろ応援してくれるようになります。
最後に、方向性を見失わない事
あなたが努力して、そして苦労して目指す目標も、それまでの過程も、全て重要。
というのも、行動する動機を見失わないため、日々の行動が意味あるものだと認識するため、その一貫性が日々の行動にはずみをつけてくれるからです。
さして実績を上げなくとも、成果を出せなくとも、勤めてさえいれば、年功序列・終身雇用時代なら、自然と年収が増えるような企業は多々ありました。しかし、今はそうもいきません。
実績や成果といった貢献をしなければならず、かと言ってそれだけが査定かと言わればそれだけではなく、働く姿勢や周囲との関係といったものも評価対象となるのが一般的です。つまり自己アピールやコミュニケーションといったスキルが今は不可欠なのです。
そうした中で、媚びることは恥ずかしい事でしょうか?私はそう思いません。
自己アピールやコミュニケーションが重要な時、上手に媚びる事ができるなら、それは立派なスキルです。
- この仕事が好きだから、もっと権限を得て色々な事が出来るようになりたい
- 転職して前より収入が下がった、だから早く元の給料以上に稼ぎたい
- 権力を得たい、自己実現の為に
- 今より偉くなってストレスの少ない環境を作りたい
- 家庭のため、安定した収入を得たい
出世には、付き合いが増えたり責任が重くなるなどのデメリットがありますが、それを補うだけのメリットを感じるから人は向上心を持てるのです。
何か実現したいという欲求があるなら、なんとしても叶えたいものがあるのなら、時にその覚悟を持って、歯を食いしばってでも、必死になって前に進まなければならない状況だってあるでしょう。