大抵、管理職になる前から管理職としての意識を持った人はいないと思います。
それまで、専門職として個人の能力発揮を求められていたものが、自分以外の部下を持ち、チームとして見られるようになります。
活用される側から活用する側へ、仕事をまっとうする側から創る側へ、環境に適応することから変化させる側へ。
管理職になることは大きな転換期であり、役割意識を変える必要があります。
前任者がいれば仕事の引継ぎがありますので、あとはそれを今までと同じように日々こなせばよい、というわけではありません。
新任管理職はここで何かしらの枠組み(マインドセット)を作り、それが自分の行動指針になるように、「管理職として何をするべきか?」という自問をするべきです。
可能性を潰す8割は自分に原因がある
管理職になると、仕事の幅が広がります。
今まで見えなかったものが見えてきますし、色々なことが出来るようになります。
経営的情報や、またその考え方は社外に出ても役立ちますし、人を育てる経験をすることは、人と接する全ての事柄にプラスとなり、自身もより強くなれます。
反対に、上記にあげたことが重荷と感じる場合もあるでしょう。
出世は自分のタイミングでなるものではありませんから、実感が湧かないものです。
単純に、今より仕事量が増えて、責任も増す・・・
これから置かれる自分の状況に恐怖を感じてしまい、淡々と仕事をこなす守りの立場に入ってしまう人も少なくありません。
これは人それぞれ感じ方が違いますし、私とあなたでも当然違いがあるでしょう。
ですが、この時点でプラス思考であれ、マイナス思考であれ、それは問題ありません。
大切なことはその次に何を考えるかであり、その先次第ではプラスとマイナスが反転します。
思うところは色々あれど、昇進を受けて席に座り、「さてどうするか」と考えたら、そこからがスタートです。
自分は自分が思うより複雑に考え、かといえば本能的には単純で、そして自分の考えには実に従順なのです。
想いひとつで変わることは難しいことではなく、その想いを継続して持つことが難しいと言えるでしょう。
どのように考え、どのように行動するのか。
行動指針を持つことは、ブレない自分を作るのに役立ちます。
考えた自分の行動指針は、紙か何かに書いて、いつでも見れるようにしてみてください。
自分の頭の中だけでは誘惑に勝てません。
私は周りに見えないようにデスクの中に入れておいて、仕事で行き詰まった時や悩んだときは、ふと見るようにしていました。
そうすることで、自分が堕ちることを防いでくれます。
目標は、理想を交えて考える
現場を長いこと見ていると、「良いことじゃないなぁ」と思うことでも『~はこうだから』『~はあんなものだから』のような、まるで触れたらダメと言わんばかりの不変的先入観ができあがりませんか?
そこで、「~がこうならこうしたい」という考えを持ってみましょう。
現実的すぎるのは視野が狭くなるし、チャンスを逃しているかもしれません。
例えば、
社員A:営業回りはこのくらいかな
社員B:あれ?〇〇はいかないの?
社員A:あぁ、あそこは本社契約で別会社専属だからね支店に決定権はないからって言われてるの
社員B:へぇ、無理なの?
社員A:上司も何回か話いったけど無理だったって
社員B:なるほど、でも案件としては大きいから行ってみようかな
社員A:無駄足だと思うよ~?
・・・・・・・・・・・・数日後・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
社員B:今日行ったら本社の人がいて、興味持ってくれたよ!
社員A:マジか!?
例えが単純ですが、営業時代に実際に私が経験したことです。
自分たちでは手が届かない話だ、ということであっても、ちょっとしたきっかけから糸口がみえることもありますよね。
もう一つ、他社製品の販促を行った際、
管理職A:絶対ノルマ達成するぞ!!何としても新規を取るんだ!
管理職B:ノルマは〇件、ただ、やみくもに営業をかけるな、まずこの製品を早急に必要とする顧客をあたってくれ
管理職A:まだ足りないぞ!片っ端から営業かけろ!同業他社がいたら安くしろ!
管理職B:この製品の原価は〇円、経費込みで値引きは〇円までだ、それ以上は下げるな
管理職A:よし!目標300%超えダントツトップだ!
管理職B:目標より件数は若干未達だな、まぁ上出来だ、ご苦労様
・・・・・・・・・・・・後日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
社長:A君、件数取るのはいいけど、原価割れしちゃってるよ・・・
管理職A:・・・。
社長:B君は、目標に少し届かなかった?
管理職B:はい、反響が強そうな顧客に絞りました。件数は未達ですがメーカー関連製品とセットで契約が取れています。売上的にはノルマの件数分以上になりました。
社長:そうか、よくやった
・・・・・・・・・・・・さらに後日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
管理職A:いや~、困った
管理職B:どうしたの?
管理職A:うちの部下がこないだの販促で自腹してた・・・
管理職B:マジか・・・
管理職A:あと顧客が増えすぎて手がまわらない、赤字なのに・・・
管理職B:・・・おぅ、大変だな・・・手伝うよ
ある程度先を見通して考えないと、必ず急な心配事に悩むものです。
目先のことばかりにとらわれてはいけません。
行動指針は少し理想論が入るほうが、考えを広くとれます。
- 無駄な挑戦はしない
- 挑戦して失敗してもめげない
- 部門業績に貢献する
- 会社の利益を考えて行動する
- 残業をたくさんする/上司が帰るまで帰らない
- 残業無くし、部下を早く帰す/社外の人との交流を活発にする
問題を起こさず無難に過ごす、目先の利益を優先する、上司の顔色を常に伺う。
一昔前なら前者を徹底すればある程度出世可能です。
ですが、管理職が見るべきは、やはり部下でしょう。
部下に自分をどのように見せたいのかを考える必要があります。
- 無難に、日々淡々と業務をこなす上司
- 常に改革や革新を考え、活発な上司
どちらのチームがより部下のモチベーションを上げられるかは考えずとも分かりますよね。
今は、上が全てを決めて下に指示し、実行させる典型的トップダウン方式ではありません。
経営陣は、組織に”実行力”を、個人に”改革・革新”を求めます。
結果は急ぎすぎず、少し長めに構えるくらいが良い
管理職になったその日から管理職として見られますが、だからといって、いきなり管理職としての結果を求められるものではありません。
もちろん、そうしたときすぐにでも結果を出したい、と思うのが人の常でしょう。
早々に方針を立てて、施策を色々変えてみたり、みんなの気持ちを変える努力をしたりetc・・・しかし、それほど簡単に結果がついてくるとは限りません。
私の経験上、やはり最初の数ヶ月は分からないことがたくさんあるものです。ある程度の知識も身につけなければなりません。
思ってもみなかったことに直面したり、意外な対応に追われたり・・・
新しいポジションに異動したら、場に流されないよう注意しながら自分の時間を作り、1~2ヶ月でおおよそ仕事の概要をつかむことです。
そして、ひとつのアウトプットを出す。新たな戦略の構想や改革案や部署内の改善策など。それらを次の月で実践に移し、微調整を交えながら続けます。
こうしたアウトプットが実ってくるのが1~2ヶ月後、むやみに焦る必要はないと思います。
結果というのはすぐには出ない。ある程度区切りを作りながらやっていこう、というくらいでいいと思うのです。
管理職として、まず自分という基礎をつくる
いつだって基本は学び、考えることからです。
管理職は個人プレーでは成り立ちません。
まず、”自分”というものをしっかりさせないと、回りが翻弄されることになります。
自分の行動には理由が必要であり、「なぜそうするのか?」「なぜそう思うのか?」を自分で理解していないと、間違いなくグダグダになるでしょう。
そもそも行動にも移せないことが多いです。
「どうありたいのか?」「それはどうしてなのか?」「それにはどうすればよいのか?」
↑ここがはっきりすると、次にやるべき事が分かります。
上にいけばいくほど、スキル系の能力よりも、人格系の能力の方が伸ばすのは難しいです。
いくら仕事が出来ていても、人間性がちゃんとしている人でなければ、部下は「ついていきたい」と思わないでしょう。
大事なことは、スキル系だけをいくら高めても、いずれ限界がくる、ということです。高めるべきは人間性であり、あなたという人となりです。