媚だって、うまく売れれば立派なスキルだ
なぜ媚びることを毛嫌いするのか。そもそも基本的に人に取り入ろうとする行為はなぜ疎まれるのか。
互いに信頼関係を築こうとする意思がないから?見せかけだけの、払うべき敬意のない下心から出るものだからでしょうか?
たしかに「媚を売る」ことの意味合いとしては、深い関わりを求めない、言わば客と客引きのような関係となるでしょう。
表面的にはそうかもしれない。
しかし、職場内において、私はこの人と互いに尊重し、強固な信頼関係を構築出来ていますと言い切れる人はどのくらいいるでしょうか。
知人から友人、そして親友へとステップアップするような、またはご近所付き合いのような単純な人間関係の構築とはいきません。
働かなければ生活が出来ない、好きなことが出来ない、やりたいことが出来ないから世の社会人は働いているのです。
だれだって好きなことをして、自由奔放に生きれればそれが理想ですが、現実は難しい、だから働くのです。
そんな職場では、多くの人が自分のストレスを軽減しようと様々な働きかけをする。
親和欲求や承認要求といった心理作用から、人間関係を結ぶ動機を作り、不安や恐怖といったストレスを遠ざけるように仕事をこなす。
そういった様々な関係が結ばれながら、職場環境は一定に保たれています。
媚を売るということは、上記のように誰もが一定水準を保てるように、当たり前に無意識に行っている人間関係の働きかけに対し、より多くのエネルギーを意図的に使う行為です。
周りが一定の水準を均等に保つなら、上司の評価は皆一定。
そうではなく、周りより抜きん出て評価されたいのなら、周りとは異なるアプローチをしなくてはならない。
そうなると、仕事の面だけで他を圧倒する成果をあげてアプローチをするのは限界があるでしょう。
上司に気に入られていれば、職場で働きやすくなる、何かあった時にフォローしてくれる、ちょっとしたことを他より融通してくれる・・・
そうしたメリットを求め、相手に取り入ろうとする行為の一つが媚を売ることです。
媚びるか媚びないかはその人の自由、あくまで目的がどこに向くかで異なりますから、働く考え方の違いです。
仕事に何を求めるかによりますが、上昇志向を持って意図的に媚を売れるのであれば、それは対人スキルだと私は思います。
ただ気に入られる事が目的なら媚びは不要
上司に嫌われると職場で働きづらくなるから、そもそも上司には気に入られた状態でいたいからと媚びを売る位なら、まず普通に良い仕事をする努力をするべきです。
良い仕事というのは別に難しいことではありません。ようは上司が部下全体に求める一定のレベルをクリア出来ていればいいわけで、
時間管理や挨拶や礼儀、身だしなみなど基本的なことが出来ていて、仕事も与えられた範囲はしっかり出来る、ミスが少なく上司の手がかからない。飛び抜けて優秀である必要はなく、常に一定の結果を出して貢献できていれば何の問題もありません。
逆に媚を売るにしても、挨拶や礼儀、身だしなみなど最低限のことが出来ていない、仕事もミスばかりでは逆効果だと先に言っておきます。
良質な媚びを売れ
良質な媚びは、一見すると媚びていると捉えられない。
その人の人となり、親切心や気遣い、敬意とられるような振る舞いです。
また、媚を売る対象以外には影響を及ぼさないようにする。影響を及ぼすとしても自分の関与を悟られないようにすることが大切です。
例えば、同僚をネタにして貶したり、悪く言ったりと、同調や比較する過程で人の足を引っ張るようなことをしてはいけません。
いやー、あいつもうちょい何とかならんかね
ほんとですよね、僕もあれはないなと思いましたもん
だよなー
うーん ひどいものですよ、課長にまで迷惑かけるなって話です
そういえば、あいつこんなことも言ってましたよ・・・
職場というのは不思議な情報網があり、いつの間にか「ここだけの話」がここだけにならなくなります。
自分のランキングを少しでも上げたいと周りを蹴落とす人は敵を作りやすく、巡って自分も蹴落とされる運命になるでしょう。
いやー、あいつもうちょい何とかならんかね
大変でしたね。でも、課長じゃなければもっと大事になってましたよ
そう思う?
そう思いますよ、あんな対応方法は思いつきません、やっぱり課長凄いなって素直に思いました。
それに、いつも最後までしっかり面倒見てくれるじゃないですか。僕たちとしては心強いですよ。
例えばこんな感じで、むしろ対象となる話題をすげ替えてあげる位の流れを作ったほうが自然になります。
また、腰を低くするのもよくない。謙遜やへりくだりというものは行き過ぎると自分の価値を著しく下げる。
媚を売ることは相手の下手に出ることだと勘違いしている人もいますが、それは間違いで相手も喜ばない。
みえすいた態度や世辞というのは相手も分かりますし、むしろ下心をはっきりと感じる分、不快です。
そうではなく、「さも自然体で素直にそう思った」といった態度から出てくる言葉が相手に印象として残るのです。
媚を売ることは下準備である
冒頭で、上昇志向を持って意図的に媚を売るなら~という話をしました。
「上司に気に入られたい」その理由はなんでしょう?
媚を売る際に、相手に気に入られることが目的になってはいけません。
何かしらのメリットが欲しいと近づくのなら、そのメリットを明確にしておきましょう。
出世したい、企画を通したい、査定を良くしてもらいたい・・・であれば、媚を売り続ける、ご機嫌取りをするだけでは目的は達成出来ないですよね。
媚を売ることはあくまで取り入る行為です。本来求めるメリットを得るためには何かしらの結果が必要でしょう。
例えば、媚びるのがうまい人は出世が早いといわれますが、媚びるだけで出世が出来るわけではありません。
必ず仕事上の結果を残しているものです。
それが媚びることによって得られたチャンスなのか、媚びることによって普段より評価が高かったのかは様々ですが、いずれにしても媚を売っていたことによる成果です。
つまり、媚売りとは目的のため、結果を出すための一手間にすぎず、それに多くのエネルギーを使ってもいられないのです。
本当はもっと別のことに力を注ぎたいはず。その為の下準備が媚を売ることなのです。