“管理職”と一括りにいってもその人それぞれの価値観がありますから、管理職にも様々なタイプの人がいます。
- 部下を自由にさせて伸ばす放任タイプ
- リーダーシップで引っ張る牽引タイプ
- チームとして個々に指示を与える管理タイプ
細かく分ければもっと増えますが、大別すると大体上記3タイプでしょう。
で、ある日機会がありましたので、それぞれのタイプの方に「管理職としての心構えは何ですか?」と聞いたことがあります。
聞けば当然方針や考え方は異なるのですが、その中でそれぞれに共通した心構えがありましたので、ここで紹介します。
部下に関心を持つ
コミュニケーションを経て、それぞれの個性や特性を理解すること。また、部下にそうした姿勢を見せる事により、その上に築かれる信頼関係こそ、円滑な職務遂行に必要不可欠。
3者共通でまず口にするのが部下に対しての接し方です。
管理職はチーム全体を動かすものですが、全体指示だけでは効果が薄い。これは多くの管理職が常に意識することでしょう。
チーム全体の管理も必要ですが、それ以前に、部下一人一人を知ることが大切で、部下の個性や能力を把握することが、適切な指示に繋がり、仕事の効率化に繋がります。
逆に、何よりいけないのが関心・興味を持たれていないと部下に思われることです。
それは、部下のモチベーションを著しく低下させる原因になり、自己都合で動く原因になるでしょう。
きっかけは何気ない一声から
コミュニケーションの糸口は難しくありません。それとなく気にかけてあげること。
何となく元気がないな、雰囲気が暗いな、逆に明るかったり、テンションが高いときに、一声かける。
それだけでも部下からすれば「あ、関心を持ってくれているんだな」と分かります。
そもそも顔を見れば、相手の状況はなんとなく分かるものです。疲れた顔をしていれば、やっぱり声をかけてあげたくなりますし、新人であれば、「どうだ慣れたか?大丈夫か?」と言ってあげたくなります。
部下の話に真摯に耳を傾けることで、自然と様々なことを話してくれるでしょう。
部下が「話したい」と思う雰囲気をつくる
コミュニケーションの積み重ねが、上司と部下の信頼関係を築きます。
例えば普段、
- 常に上から目線で仕事しろ!しか言えない
- いつも目の前の仕事に黙殺されてあせりまくり
- 仏頂面で話しかけないでオーラ全開
そんな上司に呼び出され、
「仕事をしていく中で何か思うところは?不満はないか?今日は何でも言ってくれ!」と言われたところで、部下は心を開いて真から言いたいことを言ってくれるでしょうか?
普通に考えて言わないですよね。
コミュニケーションで大切なことは「話しかける」よりも「聞くこと」です。
そのためには上記のような態度は控え、日常会話の中から「あ、そういえば、ひとつお話してもよろしいでしょうか?」と繋がる関係を目指しましょう。
直属の部下の部下も部下
例えば、課長になったとき、部下の係長ばかりを見ているのは問題だと私は思っています。
部下の部下になる、係長の部下についても関心を持たないといけない、なぜなら、部下の部下も自分の部下だからです。
自分の直属である下のポジションには気を配るけど、さらに下のポジションには関心を向けない。これでは部下に不満が生まれるでしょう。
同時に、これは貴重な情報収集の場にもなります。
どんな組織でも”上の上には伝わらないこと”があるでしょう。大抵悪い情報で、問題が出るようなことであったり、社員のやる気を下げる原因・要因であったり・・・
自分の部下の部下まで関心を持っているよ、というメッセージは、そうしたリスクを減らす、悪い情報をいち早く見つけることにも繋がります。
責任に伴う危機管理
管理職としての権限と責任を正しく理解すること。
管理職の仕事は「判断して決定し、その責任を持つこと」である。
なんて言われますよね。
現実はそんな簡単に一言で済むものではありませんから、逆にこれを普段から意識している人は少ないと思います。
どちらかというと、意識していないというより「当然」と思われているのでしょうか。
地位は権力ではなく、責任である
ピーター・ドラッカーの言葉です。
会社で働くなら出世したい、地位を手に入れたい、そう思う人は少なくないと思います。では、なぜ出世したいのでしょうか?
より大きな事に挑戦できるから、給料も含めて、今より多くのものを手に入れることが出来るから。これをドラッカーは直接的に「権力を手に入れることが出来るから」と言います。
そして、権力を手にするには、同時に責任を手にしなければならないとも言っています。
“管理職という地位が人を成長させる”そういった面は確かにあります。
実力不足だと思われながらも管理職に担ぎ上げられ、「本当に大丈夫か?」と思っていた人でも、半年一年と立つ間に、随分と板についてきたなぁと思うことってありますよね。
一方で、「この人は管理職にふさわしい」そう思われながらも、その地位に押しつぶされてしまう人もいます。部下とうまくやれなかったり、問題・不祥事を起こしてしまったり。
この違いは、「責任」という部分を理解できているか?という事だと思います。「権力」という甘い誘惑に隠れる「責任」に気付かず流されていく先には、トラブルやアクシデント、不祥事や不正、部下からの信用失墜など、悲劇的な結末が待っています。
転ばぬ先の杖
職責が上がれば、いずれ「自分一人で回す仕事」に限界がきます。
組織における管理職は「人を動かして成果を出す」ことが求めれますので、自分が抱えていた仕事は部下に任せ、その管理をしながら部下にできない仕事を自分がやる事になるでしょう。危機管理はここで重要な役割をもちます。
人は大小様々な間違いをしますから、仕事のミスやトラブル、アクシデントは付きものです。そうした対応に、様々なことを想定しなければなりません。
部下が犯した過ちは上司が責任を取る。
万一の事態に備え、事前に対処法を考えておく。これも管理職の仕事です。
そんなの当たり前だ、と思われるでしょうが、いざトラブルが起きた時、上司も自分の上司からの追求を恐れて責任転換をしてしまう場合があります。
トラブルが起きたとしても、騒がず冷静に対処、対応することを心がけましょう。部下も意図して問題を起こすわけではありません。上司の対応を見て学び、次の成長となるのです。
自己研鑽と自己啓発
人を成長させる前に、まず「自分を成長させる」事を考える。
自分が成長を意図せずただ座って指示を出すだけでは、人を動かせるはずもない。
管理職といえば、部下を動かし、鍛え、成長させるというイメージの人もいますが。
実際の現場では、部下を動かす前に自分を動かす必要があると私は考えています。
部下は敏感ですから、自分たちに成長を求めるだけ求めて、自分は定位置で毎日あぐらをかいているだけの上司は非常に不満です。
成長することを強く意識する。自分を修めることが、現代の管理職には、まず問われてくるのだと思います。
努力は必ず報われる
教育やスポーツシーンなどでよく使われる言葉ですね。
月並みな言葉ですが、私は「努力は必ず報われる」と自分を信じる気持ちが管理職には大切だと考えています。
なぜなら、”自分を成長させる”この時のベースとなるのが、この「努力は必ず実を結ぶ、なんとかなる」という信念だからです。
そして、信念は必ず行動に表れます。この行動に表れる部分を、人は見ているのです。
私は上司だ、なんて思わなくともいいし、示す必要もありません。自分を高めようとコツコツ努力していると、自然とまわりから推されていくものです。
努力したって報われないこともある。そういった面もあります。
ただ、努力による自己の成長に関わる本質は、報われる報われないの見返りではなく、その過程で発生する気付きにあり、見返りはあくまで副産物だと思います。その気付きをどのように発展できるかで成長は変わります。
まず自分に出来ることをする。今出来ることをコツコツ努力する。
そして追求していくことこそが、部下にとって頼れる上司になる一歩です。
部下から学ぶこともたくさんある
管理職は全てにおいて部下の上でなければならないのか?
当然そんなことはありませんし、そんな人はハッキリ言って稀です。
自分より外国語が流暢、自分より数字に強い、自分より資料作りが上手、自分よりも発想が豊かetc・・・
もし、今の自分が部下より少しも劣るところはないと思うのであれば、相当仕事が出来て人間的にも素晴らしいか、部下を知らなすぎるかのどちらかです。
世代によって仕事の在り方は変わりますし、そうした事に敏感な若い世代から気付かされるはたくさんあるでしょう。
それらをうまく吸収していくことも、自分の成長には欠かせません。
心構えを忘れないようにするために
- 部下に関心を持つ
- 責任に伴う危機管理
- 自己研鑽と自己啓発
これらが3者共通する管理職としての心構えです。
とはいえ、日常業務に忙しい管理職の中には、なかなか上記のような心構えはあっても実践出来ていない人は多いかもしれません。
自分ではセミナーに行ってみたり、書籍などを購入したりして勉強しているつもりでも、それを実践する機会がなければどんどん興味は失われ、忘れさられていくものです。
そこで、良いと思ったことは携帯や手帳欄、デスクなど、日々一度は目にするところにメモしておきましょう。
頭で理解しているつもりでいるのと、実際目にする場所に書いてあるのとではアウトプットの頻度が全く違ってきます。
きちんと行動に繋がりますから、是非試してみてください。